2004年11月19日(金曜日) 初日

★予想外の薔薇!★
マリー・アントワネットといえば、薔薇だ。(某マンガの影響ではない)
舞台を観られた方はお判りだろうが、この舞台、薔薇が出てくる。たくさん出る。
白と黒のモノトーンに目の慣れた頃、過去のマリーと現在のマリーが接点するシーン。
演出家が「このシーンに命をかけろ!!!!」と熱く燃えていたシーンだ。
ここで、まずは空から大量の薔薇が降る。
しかも、強烈な芳香がする。当然、薔薇の香りだ。

(お稽古中、稽古用に、薔薇ではなく梔子を降らせていた。稽古場中が
トイレの芳香剤の匂いになったのは内緒だ)

使用していたのは、薔薇の花びらを模したポプリ。これが大ヒット。
お客様の反応も上々だった。
マリーが自己と直面し、真っ白の空間に真っ赤な薔薇が降り注ぐ……
その瞬間から、会場に広がる薔薇の香り。う〜ん、なんてセレブ。

そして、金曜日の朝。会場に宛ててひとつの小包が届いた。

「(ピンポ〜ン)FA企画さ〜ん、宅急便で〜す」

なんとそれは、薔薇100本!!モチロン生花で!
これは、会場のあちこちに飾るのと、作中で使用する。

それはクライマックス。
マリーに死刑判決が下され、彼女は毅然と階段を登ってゆく。それは断頭台への階段だ。
ゆっくり登ってゆくマリー。そして彼女の椅子の上に、BlancとNoirが
薔薇を落としていく。
それは、彼女の命だ。そして、彼女とともに過ぎていった過去や現在や、人なのだ。

この薔薇。マリーの命、この作品の象徴ともいえる、薔薇の花束。
私たちは100本の生花を頼んだ。
「ベルベットローズとまでは言わないけど、こう……いい感じで咲いてるやつね!」
意気込みは十分だ。
いざ、届いた包みを開ける。さすが100本、包んでいるダンボールまでなんか優雅だ。

が!しかし!

「咲いてないいいいいいい!!!!!!」

ラ・ネージュに梦月さんの叫びがこだまする。
そう……届いた薔薇100本は、どれもこれも、見事なまでのつぼみだったのだ!

愕然とする一同。誰ともなく顔を見合わせた。

「……どうするよ……」
「今から、別の花屋に走る?」
「いや、でもそれは予算的にも時間的にもヤバイ……」

つぼみのままやるか?いや、それではあまりにも絵にならない。
今回の作品は、あくまでも「絵画的」で「セレブ」で「優雅」でなければならないのに
固いつぼみがボタボタ落ちるのでは、ダメなのだ。

「……咲かせるしかない」

誰が呟いたかはわからない。だが、誰もが同じ気持ちだった(プロジェクトX風に)

まずは水揚げをする。
陽のあたる場所を探し、水揚げしている薔薇をその場所に置いた。
そして、両手を組んで祈る、祈る、祈る……。

「咲け!咲け!咲けええええ!」

……公演が終了した翌日あたりから、満開に咲いて涙に暮れたことは秘密だ!

★声なしホウイチ★

この公演に向けての稽古中から、葵さんの喉は壊滅的だった。
なんちゃらなんちゃら、という症状で(ごめんなさい、かずきさん)
つまり、声帯が腫れて水を含み、ぶよぶよの状態だったのだという。
声はかすれ、見る影もない。
毎日のように病院に通い、最先端治療から、怪しげな民間療法まで試し倒すかずきさん。
芝居はモチロンのこと、今回は作中、2箇所も歌唱のシーンがあったのだ。
超ソプラノの歌、初日に来て頂いた方には聴いて頂けたのですが
2・3日目はダウンでした。ほんとうに残念。それ以前に申し訳ありません……。

でも初日の生歌は、非常に好評でした。

「再演の際には、絶対、ぜったい、ぜ〜〜〜〜ったい!歌う!」

と、葵さんは早くもリベンジ宣言です。

BACK