PHOTO BY WAKAO CHIHARA ※無断転用禁止

 オープニング フランス革命

幕開きの鐘が鳴り響く、ある仮面舞踏会。

フランス国王ルイ16世と、王妃マリー・アントワネットがお忍びで舞踏会に興じる中

マリーはスウェーデンの伯爵フェルゼンと恋に落ちる。

貴族たちの興味本位に浴びせられる環視の中、時代のうねりが波のように押し寄せる。

 

 

 革命万歳

「国王を殺せ! 王妃を殺せ!」

やがて、フランスの民衆たちが蜂起して国王たちに襲い掛かる。

彼らの自由と豊かさへの渇望が、「フランス共和国万歳」 の絶叫となってフランス全体に響き渡った。

 

 

 

 時の法廷 〜クロノスとカオス〜

「また時の法廷が開かれている。今度は18世紀のフランスだ」
「人間は戦争が好きだね、しょっちゅう殺しあってる」


時を守る番人・クロノス。

混沌の時代・カオス。

2人が見守る中、フランス革命は王族の処刑で幕を閉じ、時代は移り変わっていく。

 

 南北戦争

名士の青年たちがささやかに結婚パーティを行う中、リンカーン大統領が奴隷解放令を出したことを知る。

南北戦争の終結が早まっていくこと。彼らの住む南部の劣勢。戦争の理不尽さ。伝統の正当性。

全ての矛盾を肌で感じながらも、彼らは時代の波に飲まれていく。

「戦争なんてただの殺し合いよ!」

そして彼らは、新婚でありながら、いち兵士として死地へ赴く仲間を見送る。

「国を思う心と、引き裂かれるような別れが揺れ動く」
「人間が作り出した真逆の世界」
「それが人間」

  

 

 逃亡中の国王一家・・・?

爆音に逃げ惑う、アメリカ南部の青年たちのもとに、勢いよく時代錯誤な衣装を身にまとった3人組がやってくる。

「あ!さっきフランス革命時代を覗きに行って、時の扉の鍵をかけ忘れた!」

カオスのミスで混ざり合った時代と時代。

100年の時を経て、フランスから亡命中の国王一家が、南北戦争時代のアメリカの青年たちと出会ってしまう。

 

 

戦火を逃れたスカーレットは、アントワネットの非常識で世間離れした発想に辟易してくる。

「確かに時代は変わってほしくないでしょうね。時代は変わっていく、あなたたちがいなくなったあとで急速に」
「なんでそんなことが分かるん?」
「そりゃあもちろん、もうすぐあなたたちが殺され...」


スカーレットが「未来の事実」を伝えようとしたとき、傍観していたクロノスが時間を止める。

「これはルール違反。まだ生きている意識のある人たちが歴史の流れを知ってしまったら大パニック」

 幸せの行方

クロノスが時の動きを再開させると、そこは再びフランス革命前夜のベルサイユ宮殿。

ルイ16世とアントワネットの間には、聡明な皇太子ルイ・シャルルのはつらつとした姿が。

彼らがすごした、穏やかで幸せに満ちた・・・あまりにも短い時間がそこにあった。

時代のうねりは、王宮にも響いてくる暴動の爆音と共に押し寄せてくる。

「お母様、何が起きたの?僕たちはどうなるの?」
「シャルル、お母様が守ってあげます」

「皇太子ルイ・シャルル。マリー・アントワネットの処刑後、幽閉されその存在を忘れ去られるかのように、非業の死を遂げた」

 

 

 インターミッション

  

 

 

 

 ペリーと西郷

開国を推し進めにきたペリーと、開国を拒む西郷隆盛の出会い。

2人をつないだのは、西郷の愛犬・つん のまっすぐな瞳だった・・・?

南北戦争の使い古した武器を内乱の日本に売りつけたアメリカの思惑と、買い取った側の西郷の落胆。

西郷はペリーの潔い姿に心を打たれ、やがて開国派となっていく。



 明治維新

坂本龍馬、土方歳三、沖田総司。

3人のモノローグから明治維新が始まる。

西郷隆盛、桂小五郎、幾松、徳川慶喜、勝海舟・・・。次々と登場する幕末に名を残した偉人たち。

彼らの思惑はアンサンブルたちの姿となって幾何学模様に交差してゆき

やがて、時代の歯車そのものとなって回り始める。

「わしらこの世界に生きるもんは、どういたらええんじゃ?みんな幸せになりたいだけなんじゃ。そのために戦をしちょる」
「戦をやりとうてやっているわけではごわはん。民はどう生きたら幸せになれもんそう?国は平和になれもんそう?」
「わしらは、どういたらええんじゃ?」


歯車がひとつ、またひとつ・・・「歴史の構成品」から「ひとりの自分」に解けていったとき

彼が見つめる先には、どんな未来が見えてくるのだろうか。

 

  


 国王一家の処刑 〜最後の審判〜

国民たちが革命歌「La Marseillaise」(のちに、現フランス国歌となる)を口ずさむ中

ルイ16世、そしてマリー・アントワネットが処刑される。

ギロチンの音、崩れ落ちる国王たちの姿に、怒号のような喚声が響く。

国王一家を呪う声はやがて世界中の歴史上の争いに響いた声となっていき、最後の審判が始まる・・・。


  

 

 イシン、始まる。

「時の法廷は、いまの文明の抹殺を求めている」

自分勝手に生きていく人間たちの歴史の繰り返しを、時の法廷は断罪した。

「幸せになりたい!」

純粋な、ただ一つのそれだけの願いを持って逃げ惑う人々は、やがて混沌の中にうずもれていく。

 

 

戸惑い、さまよい、もがいたその先に、時を越え、歴史をまたぎ、ようやく人は互いの姿を認め合った。

かと思えたその瞬間、時の処刑が執行される。

  

 

ひとの死に絶えた静寂の中で、見守ることしかできないクロノスとカオス。

2人は、その愚かさと哀しさをただ受け止め続けていくことしかできない。

「命が命を奪って、その向こうに幸せは待っているのか?」
「そこにあるのはまた争いじゃないのかな」
「幸せになりたい人間が争いあって、また争いを起こす」
「みんな幸せになりたいから」
「幸せになりたいから争う?」
「それでいいのかな?」
「人は誰も幸せになりたい」
「人って悲しいね・・・」


クロノスとカオスが佇む中、ひとり・・・またひとりと、人たちが起き上がってくる。

 




純粋な願いのために争っていた手を、今度は傷ついた周りに差し伸べて。

支え合って立ち上がっていく姿に、クロノスとカオスは人の強さと未来を見出していく。

  

未来・・・人間の欲望は変わらない。
未来・・・何を変えていくか?
未来・・・優しさは残っているのか?
未来・・・変えてはならないものは何か?
未来・・・私たちは自らで選ぶべき道を選ぶ。それが歴史


  


時が時を越えて
終わり 生まれ 過ぎる

自分と時代見つめて
生きる 生きる 生きる

出会いの奇跡は 時を織り成してく
希望と優しさがこの星を満たしていく

時が重なって 歴史作っていく
命紡いでいこう 新たな歴史

「ISHIN!始まる!!」

 

※ステージ写真は、神戸公演(KAVCシアター)と東京公演(ひの煉瓦ホール(小))が混ざっています。