第1部 マリリン〜Lovin'me〜


Word.0 Introduction - はじまり -

 JAZZシンガー(葵)が静かに歌う、あるバーの一角。

トレンチコートの男K(大浦・樹生)と、M(梦月)が人目を忍んで落ち合う。

 

M 「遅くなってごめんなさい」

K 「君が待ち合わせに遅れるのは今日が初めてじゃないよ」

M 「いじわるを言わないで」


Word.1 Youth - 少女時代 -

M 「少女の頃、私はいつも孤独だったわ」

K 「君を愛さない男がいるわけないよ」

M 「違うの。誰かに愛して欲しかった」



M は、孤児だった頃の思い出を K に語る。


Word.2 Stalet - 駆け出しの頃 -

M 「モデルの仕事を受けたのは、それまで働いていた工場より給料がよかったから。

   それに私自身、人に見られるのは嫌いじゃなかったからよ」


Word.3 Acting - 演技 -

K 「君は女優で演技をするのが当然だけど、僕は本当の君を見てみたい」

M 「本当の私なんて、私にもわからないわ」


Word.4 Men - 男達 -

M 「女優の仕事は大好きよ。だけど…寒い夜に誰も寄り添ってはくれない…」





M は心の裡を吐き続ける。無垢なまでの愛情を欲しがるM。現実の愛情を説くK。

2人の間には、決定的に埋められない違いがあった。


Word.5 Wedding & Divorces - 結婚と離婚 -

M 「私は16歳の時に、叔母の勧めで結婚したの」

彼女の3度の結婚と離婚、そしてハリウッド女優として邁進することで大衆の愛情を得ようとした過去を語りはじめる。


 

「ハリウッドというところは、キスには1000ドル払い、魂には50セントしかくれない。

 私は良く知ってるの…。

 だって、50セントのために1000ドルを何度も蹴ったんですもの!」



過去の話は現在へ。

M は、満たされない愛情を求めて K に叫ぶ。

「私はあなたが好き。それだけじゃ…どうしてダメなの!?」

 


Word.6 Epiloge - エピローグ -

M が演じることで愛情を得るように、K もまた大統領としての責務を全うするために自身を偽り、「よきヒーロー」を演じている。

そんな2人は似て非なるものであり…誰よりも近い魂を持っていた。



M 「乾杯しましょう」

K 「女優の君に」

M 「正直なあなたに」

2人はグラスを交わす。それが、最後の合図だった。



M 「さようなら。…楽しかったわ」

 

M が去っていく姿に、思わずその名を叫ぶ K。

しかし M は振り返らず…ショールだけが残される。

やがて K もまた形容ならぬ哀愁を背負ってバーを去っていく。



店内に響き残るのは、シンガーの力強くも哀しい歌声…。

そして、シーンは M…マリリンの内面へと移っていく。