今回、本番のハプニング大賞・ナンバー1に輝いたのは、文句なしにコレです。

川島芳子を演じる葵かずきの「森進一」事件です。



あ。森進一さんご本人とはなんら関係はありません。



今回、「望郷〜」は十字路を使用した舞台づくりで、

その四隅にキャストが始終出演しています。

さらに一人のセリフが長いため、誰かのメインシーンになったら、

15分くらいは「物思いにふける」芝居をしながら、

ソファや椅子にて沈黙を守っています。

 こんなカンジで。


照明も近く、春先。いいお天気に恵まれたこの公演。



乾 燥 警 報 発 令 。



ただでさえ、水分を口に含むことが出来ないこの作品。

黙ったままでいざ声を出そうとすると、喉が張り付いていたりします。



その最たるのが、かずきさん。

通称「ジョンストン」と呼ばれるシーン(※陛下の家庭教師の名前。

一度しか語られないのに何故かすごい存在感)で、

川島芳子はソファから立ち上がり、語り出します。



「どうして僕が男装しているのかって?皆それを知りたいんだろう?」



お兄ちゃん!!!!!!! 声が出ていません!!!!!!!



森進一のような、田村正和のような、おっさんのような

カッスカスの声を搾り出すかずきさんを、残りの3人は



「芝居を忘れて一斉におにいちゃんを見た」(後日談)



のです。

ここから、芳子さんのメインシーンがやってきます。

長いセリフ、孤独感に苛まれる絶叫…ムリムリムリムリ!



しかし、交互に会話をしていくうちになんとか声を取り戻したようで、

途中からは普通の声に戻っていました。



「あせった…こんなこと芝居人生で初めてだ!」



と終演後の楽屋でかずきさんは大変なショックを受けていましたが、

その後にもし声が出ないままだったらどうフォローするべきか!と

全員が考えた一瞬でした。



なお、ほぼ全セリフを憶えている私の対応策は

「会話はともかく。一人セリフの場合は

中立の李香蘭である私がアテレコするしかない!」 と思ったものです。



正:芳子「こんな風に生まれついたんだ。僕はこうやって生きるしかない」

案:淑子「そんな風に生まれついたのです。あなたはそうやって生きるしかない」



正:芳子「お前たちだけが僕の友達だ」

案:淑子「そのサルたちだけがあなたの友達」



悲しい。悲しすぎる…。

その後、全員が毎公演の開演前ごとに



「どうか森進一が来ませんように!」


と祈りをささげておりました。