NY滞在記 2006.8.16 Wed


舞台最終日です。1日がとても短くて、濃厚で、

あっという間に滞在6日目……え?もう6日も経ったの!?

ホテルマンもドアマンも、みんな流石に慣れてきました。

時代劇一行がロビーを通っても、にっこり笑顔で「いってらっしゃい」。

……ここの人たちに、私たちの素顔を覚えてもらうことは出来ないんだろうなぁ……。

11:00 いざゆかん、セントラルパーク!

今日はホール入りが14時ということもあり、役者4人で広報活動へ!

「最後の最後まで、諦めずに生き抜いて広報してみせますよ」(by沖田っぽい)

人が多いところがいいねーということで、ホテルの前に広大に広がる、有名な公園
セントラルパーク付近へ行くことに。
スタッフ3人は買い物に立ち寄りたいということで、ここで別行動です。

扮装を終えて、いざタクシーに乗り込み、コロンバスサークル、というところへ。
ここはセントラルパークの入り口にあたるロータリーで、
とても大きな交差点の真ん中に大陸発見のコロンブス像が建っています。

 金色のやつがコロンブス。

交差点には、NYの街中、どこでもパトロールで居るポリスが数人。
(……なんか言われたら日本人笑顔で切り抜けてやる)と思った私の思惑を知ってか知らずか、
全然何も言われませんでした。

逆に私から 「ここでDM配っててもOK?」 と聞きにいくと、笑顔で 「モチロン!」と。

扮装がやはり決めてだったのでしょうか。ポリスマンたちにも 「1枚おくれ」 と言われて
配布してきました。

  それにしてもまあ。

  溶け込まないなぁ……私たち。

コロンバスサークルでは、日本から持っていった団扇を配ったのですが、これも大人気。

  うちわいらんかえー。

(家で眠っている要らない広告ウチワをラッカーで塗りつぶし、表には「桜」の文字と
 桜柄のシールが舞い散り、裏には百人一首や古典文学、童謡の歌詞など
 日本らしい言葉を書き連ねました)

毎日寒いほどの気温だったNYですが、この日はようやく夏らしい陽気だったので、尚更でしょうか。

道行く人、くつろぐ人にフライヤを配っていると、写真撮影をお願いされたり(撮られる方です、念のため)

いろいろ質問されたり、と、なかなか楽しい時間でした!
わざわざ離れたところからフライヤを取りに来てくれる人もいるくらいです。

時代劇の勝利だ!

14:00 ホール入り

今日は一番手なので、ホール開場を劇場前で待ちます。
待つ間も配る、配る(笑)

3000枚のフライヤは、事前に1000枚はNYに送っていて各所に置いてもらっていたので、
残りの2000枚。持って帰るのも悲しいのでなんとか完全にハケていきたい!と思います。

……勝負は、ラスト公演の前だな。

ちらりとそんなことを思いつつ、開演準備をする私たちなのでした。

15:00 開演

スタッフも役者も、全員がそろそろ 「こんな感じ」 と慣れてきました。
行灯がつかない事がないよう、コンセントは代替しましたし、照明卓も万端な様子。
舞台で使う小道具や衣装は、出番が終わると次々に、舞台補助をしてくれていた姐さんの手によって
片付けられていきます。後半になれば、舞台裏は美しく整理されていて、閉幕後すぐにでも
出て行けるくらい!

 

今後の舞台生活にも反映されると思います^^

そうそう。この回はヴィッちゃん@土方の、ブログ仲間さん(NY在住)が観に来てくださっていました!
カーテンコールの時には花束を受け取るヴィッちゃん。

 素敵な花束!

日本から半日かかって来るようなところでも、こうやって繋がることができるのだなぁ、と
インターネットの普及に感謝、感謝です。

17:00 終演 & 広報開始!

終演を迎え、初日からは考えられないほどに素早い(そして整頓されている!)撤収を経て、
いざゆかん! 最後の1枚までハケきってやる! とばかりに飛び出した役者組。

扮装のままでフライヤを手に、まずは劇場付近にたむろっていた次回作を観るだろうお客様に

「その次だから! そのまま観てて!」

と配り。ラスト1回、今夜限り!というようなことを言いながら配り。

  

そして途中、交差点を先に渡った私に、傍に停まっていたパトカーからポリスが!
やばい、とうとう最後を目前にお咎めか!?

「コンニチワ」

……うわー。流暢な日本語。

なんとテキストオンリーの独学で日本語を勉強したというそのポリスは、どうも私たちの格好が
とても気になり、とてもスキで、とても興味があるんだ! という風情。
コンビを組んでいたパトカー中のポリスと二人で 「見ろよ、ホンモノのゲイシャだ!」 的なノリ。

交差点の向こうで信号待ちをしていた3人のサムライは、流石に蒼褪めたらしいです。
(私がしょっぴかれるかと思って)

それどころかとてもフレンドリーに色々とお話をしました。
(日本刀はNYでは高価なもので(日本でも高価だ)$2000はするけど、折れたりしたら連絡くれとか)

会話中、赤信号で停まった車の中から、後部座席に座っている子供さんが持っているカメラで
写真を撮らせて欲しい、と頼まれたときなど、すわ、と交通整備開始。

  

あははー……ありがとうございます。

近隣のレストランにもそれぞれ置いてもらい、観に行くよ!と言って貰ったり、反応は上々。

  

たまたま入ったお店には、先ほど花束をくれたヴィッちゃんのお友達がお茶をしていらっしゃり
偶然会えた幸運に話に花が咲いていました。

  

そうそう。いつか絶対言われるだろうなーと思っていた一言は、ことここに来てようやく耳にしました。

「ラストサムライ!」

やっぱりな(笑) 
ちなみにそれを言ったのは偶然出会った、ムエタイのアメリカチャンピオン(男前)です。

20:00 開演

最後の公演です。

 気合いも充分

開演前、主題歌である「さくら」が流れます。
いつもはここで、ぎゅーっと集中していくのですが、このときばかりは走馬灯が流れました。

「NYで開催される芸術祭があるので、受けてみたら?」

そんな話を聞いたのはいつだったでしょう。

「いつかは、さくらはブロードウェイね!」

冗談のように、でも誰も冗談でなく語り合ったのはいつだったか。

年末年始で応募書類と格闘しながら、資料を作りながら。
こんなことを言うと高慢かと思われるかもしれませんが、思われてもいい。

落ちる気なんて、全然しなかったのです。

 

コトバはどうする。日本刀なんて持っていけるのか。
行ったことのない国の劇場で、どうやって問題をクリアする?
スタッフは? 字幕は? ホテルは? 費用は?
沢山の不安を抱えていても、どこか根底に 「大丈夫だって」 と思っていました。

そう思えたのは、それだけのことを思わせてくれる力強く頼りのあるメンバーのお陰です。

「みんなに出会えてよかった」

沖田くんのセリフ。劇中、思わずなきそうになりました。声を抑えるのに必死だったけど、
ちゃんと答えたつもりです。


「おおきに」


  

出発の1週間前に、充電のつもりで遊びに行ったUSJ。
「きっと願い叶う」 というキャンペーンをやっていたので、しっかり絵馬(星型のカワイイやつ)を
奉納して、拝んできたけど。

ほら、ちゃんと叶った。
いいえ、みんなで叶えました。こんなに力強く、確かに。

カーテンコールの拍手を頂き、再度出た舞台の上で迎えた終幕。

なんて誇らしく、なんて清々しいものだったでしょう。

皆さん。観て頂けましたか。これが日本の心です。日本の潔さです。桜のココロなのです。
信じる生き方を、強い精神で、己の信条に恥じず、誠の気持ちで、真正面から。

そうやって生きた人たちを、そうやって生きている私たちを。

素晴らしく暖かい盛大な拍手で認めてくれたお客様たちに。
突然NYの街中に現れた侍と芸者に感激してくれた人たちに。

やり遂げた私たちに。
この公演を支えてくれた全ての人に。

ほんとうに、ほんとうに、ありがとうございました。

22:00 終演 & 打ち合げ

  

ステファニーと記念写真を撮り、名残惜しく劇場をあとにしました。
直ぐ隣にあったベトナム料理のレストランになだれ込み(もちろん、扮装のままです)
簡単ではありましたが、打ち合げをすることができました。

  

料理は美味しいし、大入り袋を渡す時には店員さんが一緒に拍手をしてくれて、
さらにケーキまでサービスしてくれました。みんなのハッピーな笑顔の賜物でしょうか。

  

   

ちょうど、オープンテラスになっているので外から見えるのですが、そこで日本人のご婦人が
「観に行きましたよ」と声をかけてくれる嬉しいハプニングもあり、ああ、なんていい気分。

 ありがとうございました!

大変、大変御世話になった竹松氏と宮本氏にも別れを告げる時です。
次の機会に!と言えないのがさびしいところ……いいえ、またNYでやるかもしれません!
やっぱり 「次の機会に」 ですね。 と笑顔で解散ができました。

0:00 ホテル プチ宴会

ホテルに戻り、深夜。
疲労困憊ですが微妙なテンションを保ちつつ、扮装を解いていく私たち。

(以下、微妙なテンションの証拠)
  

  

また暫く、この着物たちを着ることはないかもなー。

と思いながら、ようやくここで全員がさくらTシャツになることができました。
買い出しに行ってもらっている間に準備をして、全員揃って、プチ宴会。

  

ここでは日本から持ってきた、私の秘密兵器がお待ちかねでした。
NYについてから、ずっとホテルの冷蔵庫で冷やされ続けた、
北海道 函館五稜郭土産の 「土方歳三の血」 ワイン(赤)です!

大変だったねー。でも楽しかったねー。
素敵な思い出になりましたねー。と、思いを馳せつつ。

ホテルと劇場の往復。
衣装かパジャマか、という服装。

おおよそ観光ではないNY滞在でしたが、とても心に残る日々でした。

3:00 まだだ。まだ終わらぬよ。(荷造りが)

と、いうわけで。
先に帰国するとっくんさん、ヴィッちゃん、姐さん。
荷造りをしないと帰れません。

同時にチェックアウトをして部屋を移動する居残り組(かずきさん、美香さん、山妹さん、なち)も
荷造りをしないといけません。

出国時、私たちを悩ませたカルネの申請のため、道具類も振り分けなければなりません。
コレを持って帰るから、じゃあコレ持ってかえって。というふうに全員で振り分けをしつつ、
荷物の重さを振り分けるために荷物を検分。
ホテル内で過ごした6日間の名残の(主に食料)も片付けていきながら、夜は更けていきます。

全然終わりませんよ。あはははー。

帰国組は9時のフライトに合わせて、7時には空港に。てことは6時ホテル出発だから
まあ荷物が出来ていればギリギリに起きても平気ね!ということで、先にシャワーを浴びてもらい
荷造りに専念してもらいます。
私、多分最後に寝たと思います。外も明るくなった、5時過ぎくらいでしたか。

いいの……みんなを見送ったら少し寝るから……。

しかし、居残り組は2日の延泊。キレイにつめても、これ明日にはまたぐちゃーってなってるんだろうな
と思うと、涙で前が見えませんでした。