NY滞在記 2006.8.15 Tue


中休みを経て気力充填!

さて今日から2日間、4回公演です。

どんな舞台が待っているのでしょうか。

午前中 @ ホテル106号室

今日は公演が夕方からなので、少しゆっくりめの起床です。
そういえば、NYに来てから満足に眠った人などいないのでは。というくらいに、過酷なスケジュール。
今日は少しゆっくりめに起きて英気を養います。

すでに私たちの冷蔵庫と化した、ホテル近くのスーパーで買い求めたパン、ハム、チーズ、シリアル、といった
完全なアメリカンブレックファーストを各自で摂り、慌てず焦らずの準備が始まります。

「さくらのごとく」はさくらさくらカンパニーとしては4回目。公演では3回目。
準備もややスムーズに手馴れた感じになってきました。

初日では、主に機械的なトラブルが多発したため、少し早めに劇場に入り、
スタッフと打合せをするために二手に分かれることになりました。

スタッフミーティングに出る、かずきさん(葵)、なち(梦月)、美香さん(森下)は劇場へ。
その他のメンバはフライヤを持って、先日のAstor Placeから広報しながらの劇場入りとなります。

じゃあ、劇場で!と初の別行動です。

ちなみに。

サムライ+ゲイシャで乗り込んだタクシーの運ちゃんはジャマイカの人で、私たちの扮装に興味津々。
フランス語で経済学を教えているというその運ちゃんはレゲエからJAZZに至るまで音楽に造詣が深く、
ホテルから劇場までの道のりで、ずーっと薀蓄を傾け、それの相手をしていた私(梦月)は
かなり辟易としていました……。

カツラを乗せた重いアタマでは、聞けるモンも聞けんわ!と内心思っていたのです……ごめん、運ちゃん。

15:00 打合せ組 + 広報組

私は打合せ組みだったので、そちらのレポを。

劇場では私たちの前の団体が上演中。ロビーは閑散としているので、
そこで打合せをすることになりました。
チケットブースにいたステファニーが、日曜にプレゼントしたさくらスタッフTシャツを着ててくれて感動!
「とっても素敵!」と喜んでくれました。

竹松氏から、現地で掲載された情報誌をたくさん頂き、さらに初日公演を観に来てくれたという
評論家の劇評が掲載されていたから、とそのコピーも頂きました。

劇評家が来ることも少ないし、来ても書かないし、書いても乗らない。

そういう条件の中で、早速掲載して頂けたことを感謝しつつ。
日本語の2時間近くある舞台で、字幕もそんなに良いとは言えない
(語彙の間違いやニュアンスが違うこと字幕を送るスピードや、可視性において)
けれど、作品とストーリはとてもよく、
NY国際芸術祭に相応しい作品である、というような劇評でした。

「脚本演出の中野圭子が作り出す、魔法のような空間」 

という表現が、まさにアメリカンな感じで
モチロン私は中野さんではありませんが、なんだかくすぐったいような、うれしいような。

魔法空間ですよ!中野さん!

打合せをしていると、広報組が合流。扮装をしたままフライヤをいろんなところに置いてもらったらしく
なかなかの成果だったようです。

打合せが長引いたので、その間広報組には近くのカフェでお茶してもらいました。

サ ム ラ イ ス タ イ ル の ま ま で 。

それでもあんまり気にしないニューヨーカー。さすがは移民の国です。(そうなのか)

  

17:00 本番2nd

さて、本番です。
今回のいちばんの恐怖は

行灯がつかない。

ことでした。

島原のシーンでは、かの有名な、ゴッドハンドじい作の行灯が、暖色の明かりを灯して
イイ感じに雰囲気を盛り上げてくれるのですが、今回はこの行灯がついたら全体照明が入る、という
重要なきっかけを割り振られていたのです。

行灯操作は、ヴィッちゃん。
土方さんの格好のまま、舞台のタイミングを見計らって、えい、と行灯の電源を入れるのですが。

つかない。
なんどやってもつかない。

「なんでだーーーーーーー!」

と小声で叫ぶヴィッちゃん。
舞台上に暗転のまま板付きのとっくんさん@山南はさぞ不安だったことでしょう。
瞬時に、とりあえず出てしまうか!喋りだしたらさすがに照明ブースが察して点けてくれるだろう!と
思った(だろう)かずきさん@沖田。す、っと舞台に出た瞬間、行灯からオレンジの明かりが!

「つ、ついた……」

どうも接触が悪かったらしく、結局は点灯しましたがハラハラしました……。


ちなみに、ここにおいても多摩のシーンは暗転にならず、明転のまま(明かりがついたまま)
山南&沖田は歩いて出て行き、仕切りなおしのないまま過去のシーンとなり、
山南&土方は歩いて出てきて、どこから来たん?という感じになり、
またもやそのまま立ち去っていき(ココがいちばん情けない/笑)
山南&沖田は、散歩の途中っぽく歩いて帰ってきました。

「次こそは……ッ!」

と3人が内心激しく照明ブースに祈りを捧げていた……かどうかは、定かではありません。

それにつけても、アメリカ人の派手な反応にはびっくりです。

今回、特に笑いのツボが広く深いおねーさんがいて、島原のシーンなど、
こちらが心配になるくらいに笑い転げていました……。

(ちょっとソコ笑うところ違うから、というところでも笑っていましたが……)

19:00 終演

舞台的な不安は抱えつつも、しかして芝居は結構イイ感じに進んだ2回目が終わりました。
一度劇場から出た私たちを、ヴィッちゃんが埋もれて見える!くらい背の高い集団が
待ち受けていました。

「素敵でした」

と流暢な日本語で話し始めたのは、なんと神戸大学で教鞭をとっているという先生。
彼女が中心となってどうやらお友達を連れて観に来てくださったようです。
(なお、笑いツボの広いおねーさんもココにいました/笑)
絶対に判りっこない、と思っていた明里の京都弁をほめて頂き、
今回ニューヨーク版で新たに入って私を泣かせた日舞のシーンも

「何派で習っていらっしゃるの?」

と尋ねられ、いえいえ、独学です。と答えつつ。
日本語にも日本文化にも造詣の深い方だったので、とても楽しいひとときを過ごしました。

なおここでも、魔法空間を生み出す中野圭子作品は大好評で、

「プロの翻訳家に依頼すれば、紀伊国屋NYで売れる本になるわ!」

との太鼓判を頂いておりました。
うーん。中野氏、グローバルスタンダード?

21:30 本番3rd

 

  つかの間の休息……。

1時間ほどの休憩を取り、あれよあれよと折り返しの3回目です。

それにしても21:30開演。なんだ、この時間。

と、さすがに不安になります。NYで知名度などゼロのさくらさくらカンパニー。
いくら芸術祭主催の公演だからって、今まで2回分はお客様に来て頂けたけど、
21:30開演、23:30終演予定の舞台にどれだけの人が入るというのでしょう。

不安になってステファニーに、こんな遅くてもお客様来るの?と聞いてみたら
とても不思議そうな顔をされて、なんでそんなことを聞くのか判らない、という風情で

「遅ければ遅いほどみんな観に来るのよ。ニューヨークでは芝居は遅いものなの。
 ブロードウェイも、20時とか20:30スタートが主流だし、オフブロードならもっと遅いわ。
 仕事が終わって着替えて集合して、余裕を持って舞台を観て、
 ご飯を食べたりバーに行って帰る、ってのがフツーのスタイルよ」

……日本ではあまりお目にかかれない余裕。
舞台が生活に溶け込んでいる証拠でしょうか。いいなぁ。この環境。

いざ開演してみると、ステファニーの言うとおり、夕方開演の2回目よりもお客様が多く
彼女の言い分を納得した私なのでした。

さて、撤収が15分なら、転換(舞台の準備)も15分!
この過酷なスケジュールの中、そろそろタイムに慣れてきた舞台裏ではかなりの余裕。

誰も振り分けたわけでもないのに、自ら分担をしてモノを配置し、整備していきます。
どこも過不足なく手と眼が行き届いた状態で、準備万端。

「開場まだかな」

と言う余裕まで出てきました!

……しかし、それとは逆に修羅場だったブース側。
このとき、緊急事態が発生! 照明卓はプログラムを打ち込むタイプのものなのですが
そのデータがいきなり全消去されてしまったのです!

ステファニーの「開場してもいい?(するわよ)」が聞こえている中、えええええ、もしかして照明なし!?
とものすごい不安を抱いたものの、照明の宮本氏からなんとか開始OKの合図。

どうなる、どうする!

…………。
……。
…。

結論。

プログラミングをしながら照明卓をリアルタイムで操作していた宮本氏。
今までの「明かりが消えない」「明かりがつかない」はプログラムバグのせいだったらしく、
手づから直しつつ打ち込んでいったこの回では、照明のオンオフに問題はなかったのです。

というわけで、今回初めて、多摩で仲良く散歩する山南&沖田&土方は
暗転スタンバイができた、とほっと安堵しておりました。
災い転じて福となる。ということでしょうか。

23:30 終演

日本では考えられない時間帯ですが、終演直後です。
さすがに疲労困憊な私たち。

 

 

帰りのタクシーでは全員が無口で転寝。そりゃそうですよね……。

ホテルに戻って扮装を解いて、順番でシャワーを浴びて……。

いつ寝たのか、全然思い出せません。