NY滞在記 2006.8.13 Sun


さて、いよいよ初日を迎える今日!
ニューヨークは快晴!

やや肌寒いけど……。(何故だ)

6:00AM @ ホテル106号室

今日は怒涛の仕込み+本番1ステージです。乗り打ち、と呼ばれる公演です。
しかも本日、照明の宮本氏と初対面。

初対面の照明さんと、未知の劇場で仕込み時間4時間。


……過酷すぎやしませんか。


それでも便宜を図っていただいて、劇場入りを1時間早めてもらった。

都合5時間か……ううむ、どうしよう。

衣装やメイクに時間がかかるので(日本モノは大変なのです)ホテルでメイク。着付け。
私、明里のカツラは重くて負担が大きいので持参して本番前にかぶるとして。

 濃い顔でも気にしないわ。

8:00AM @ ホテル106号室

恐らくニューヨークではあんまり見かけない侍+遊女扮装の4人、ホテルロビー通過。
(ニューヨークだけではあるまい)

前夜に予約しておいた小型バンが、時刻よりは少し遅れているようでまだホテル前にいませんでした。
時間、大丈夫かな……まあ余裕見てる出発時間だし、数分の差ならいけるだろうけど。
と、ヤキモキしていると、フロントのおねーさんがとても物珍しそうに
「わんだほー」「びゅーてぃほー」を連発してくれました。


そして一瞬、たじろぐ運ちゃん。


大丈夫。襲ったりしないから。

……でもまあ、ニューヨーカーに、侍3人、遊女1人、スタッフTシャツ着たおねーさん3人、を
バンに乗せて運ぶことも滅多に無いでしょう。

運ちゃん、興味津々でした。

9:00AM @ ホール入り

……の予定でしたが。
到着したのは8:30過ぎ。早くに着いたのでヨユー、ヨユー、と朝の街角でまったりするメンバー一同。

「……似合わないですね」
「おかしいですよね」

着物姿の侍+遊女。ニューヨークの街並みに溶け込まないことこの上なし!

 
ホントに似合わない。

「わー……写真撮っておこう」

と、携帯のカメラを構えるとっくんさん(徳永)をファインダに収めたこの写真はまさに

【サムライでも使える 海外でも使える 何処でもド●モ】



みたいなカンジがしませんか。私だけですか、そうですか。


ちなみに 【世界でも迷わないサムライ ボー●フォン】 でも可です。
 「あなたも国際人。」

9:40AM ホール入り(今度こそ)

やがて遅れてきた劇場マスターのStephany(ステファニー)。
『終わる時間には正確』な彼女との初対面。
いきなりが着物姿でごめんなさい。
(今思えば、ステファニーとは一度も普段着では会っていません。なんてこと)

袖の下(笑)に、日本からお土産に持ってきたお菓子を「他スタッフと食べてね」と言い添えて差し入れて
別途、さくらスタッフTシャツをプレゼント。
フロントには「桜」と漢字と桜柄のモチーフが入り、バックにはFringeの文字。
漢字が好きなニューヨーカーらしく、ありがとう!と喜んでもらえました。

今回、音響の美香さん(森下)、字幕操作のやまいもさん(山田)、舞台裏スタッフの姐さん(竹内)、
現地ACR(世話人)の竹松氏、照明の宮本氏にも同Tシャツを着てもらっていました。
Fringe限定さくらスタッフTシャツ。なかなかの評判です。

 チャーリーズエンジェルならぬ、伊丹ーズエンジェルです。

The Conelly Theater

初めて見るThe Conelly Theaterは、入り口⇒ロビー⇒客席、という贅沢な空間。
元は百年単位も前の建物なので確かに古いのですが、適度に落ち着きゴシックな感じがしました。

 入り口です。

常設で200人程度の小ホール。
2階席もあるオペラハウス形式の劇場です。
舞台は客席より高く、プロセニウム
(枠組みのある舞台)。
客席は段になっていてどこからも舞台が見やすく
さらに舞台袖は奥行きがあって広い。

両端からは客席に降りることも出来る階段も付いています。

「……これ、日本に欲しいですよね」
「いい劇場ですね!」

さくらさくらカンパニーが公演を打つには最適な空間。
こんな劇場がゴロゴロしているニューヨークはさすがショウビズの世界だと思います。

この環境、日本でも整えるべきだ!!!!(力説)

テクニック・リハーサル

舞台を確認し、早速各自の持ち場で仕込み・場当たりが始まります。

「さくらのごとく」では舞台上に段を組んで舞台セットとしていたのですが、
NYに段を運び込むことは出来ずかといって現地で作るのも大変だし、
そもそも芸術祭の1作品としての出展の関係もあり、

舞台と舞台の転換(入れ替え)が各団体 1 5 分 しかない!すごいな……

という超ハードスケジュールなので大道具は、なし。

照明卓はプログラミングタイプで、宮本氏がかなりてこずる…
…なぜなら、半ば壊れていたようなものだそうでバグばっかりが出てきて言うことを聞かない!

日本から持ち込んだMDデッキも、NYの空気が合わないのか何故か音が出ず、
急遽劇場に据えてあったMDデッキで対応。

美香さん、いつもと違う環境なのに頑張りました!

字幕を映すためのプロジェクタは、この段階では問題はなかったのですが、
なんとこの後、本番直前で字幕が出ないというハプニングが! 

その時にはなんと音響も出ず、ブースでは
スタッフの阿鼻叫喚が繰り広げられていたそうです……。
オソロシイ……。

怒涛の場当たり、明かり作りをして、あっという間にテクリハにもらった4時間は過ぎてしまいました。
あれよあれよと言ううちに本番直前。

ギリギリまで走り回っていた私たちは、開幕直前まで落ち着くことが出来ず、
まさに波乱の幕開けとなったのです……。

15:00 開演(1st)

舞台袖から見える客席には、地場のないさくらさくらカンパニーであるにも関わらずお客様の姿。

しかも、私たちの予想を裏切っての現地の方、つまり日本人以外が大半!

時代劇は「ラストサムライ」「SAYURI」の影響もあるのか、やはり興味深い対象のようです。

ステファニーの、日本では考えられないくらいにフランク・フレンドリーな前説が終わり、
なち収録の作品概要アナウンスが流れ、主題歌が流れ……


何 故 か 明 か り が 消 え ま せ ん。


幕開け。暗転からスタンバイする、冒頭の沖田(葵)と土方(大浦)。
小道具の貧乏布団(通称)と貧乏枕を持って
舞台袖で 「明かりが消えないいいいい!」 といきなりのハプニングに大慌て。

大浦

梦月

大浦

梦月
 「どうします」
 「もう少し待とう」
 「でも主題歌終わったよ」
 「……つかないな」
 「行きますか?」
 「行くか!」(明転中でも出ようとする)
 「あ!待って!消える!(袖を掴んで) よし、消えた!GO!」

この間、わずか数十秒。
ドキドキハラハラで幕を開けた初回。

 『池田屋事変のシーンが真っ暗で「殺陣はシルエットでお楽しみ下さい」(byヴィッちゃん)』事件

 『現実と過去の転換照明が変わらず 「はけましょう」 と小声で促す沖田くん』事件

 『現実と過去の転換照明が変わらず、仲良く歩いて出てきた過去の山南さんと土方さん』事件

 『照明ついたら山南さんスタンバイしておらず、慌てて「探索する沖田」アドリブで切り抜けた』事件

 『でも思いついたナイスアイデアのわりには小心者なので舞台半ばで戻ってきた沖田くん』事件

 『そしていざ照明がついたら、その後のシーンに必要な刀を持っていなかった山南さん』事件

 『慌てて刀を持ってさりげなく置く沖田くんナイスフォロー』事件

 『もしかしてその後に必要な小道具(手紙)を持っていないのでは!と思い、
   舞台袖で「取りに来い!」とマイムを送り続けた土方と明里。
   しかし手紙だけは持っていてほっと安堵したよ』事件

などなど。

細かいことを書いていては間に合いませんので割愛しますが、それはもう、
語るもナミダ涙……のハプニング大会でした。
度胸つきますよね。ええ、ホントにね。

「大丈夫、なんとでもなる。
 舞台上だけは、お客様に見えるトコロはしっかりとやり遂げれば大丈夫。
 何があってもみんなでフォローする!」


と誓い合った、その夜のミーティング。
この予測不可能の舞台を越えたからこそ、今後残った4ステージを乗り越えたのだと、今なら思えるのです。

17:00 終演

それぞれの思いを胸に秘めつつ、舞台裏とスタッフの胸中こそまさに修羅場ではありましたが、
何故か舞台上の演技は

「あ……なんかイイ感じちゃうのん?」

と思えた不思議な初回が終わりました。
「ええい、どんなことがあっても何とかしてやる!」と思ったことで、余計なチカラが抜けたのでしょうか。

やるしかねぇ! とスイッチが入ったのか、とてもナチュラルな気持ちで舞台に立っていた4人。

あれこれ不安なことはありましたが、「なんとかなる!なんとでもなる!」と思って幕は下りました。

 ラストシーン 舞台袖から

脅威の15分撤収のために、舞台で使用した小道具類は、使用が済むとすぐに片付けに入り、
全9場、後半になればなるほど美しく片付いていく舞台袖……。
トランクケースに小道具や着替え、ゴルフバックに日本刀と木刀。
その他の荷物を携えて、終演するや否や「さあ。すぐにでも撤収するわ!」という意気込みです。

早く、早く。一秒でも早く。と念じた15分撤収。

これが後ほど、あんなふうになるなんて……

初回で何もかも手探り状態の私たちにはこのとき、想像もつかなかったのです。



客席を離れたお客様たちは、劇場の外やロビーにいて余韻に浸っており、
私たちが出てきたときには口々に賞賛を浴びせて下さいました。

アメリカ人の素直なリアクションをしばしば目にする私たちですが、
笑い、泣き、日本人よりも素直に日本の心を受け止めてくれた。

そんな反応を感じました。

20:00 初?夕食

興味津々の視線を浴びながらホテルに戻ってきた一同。
扮装をとき、はたと気付きます。

「……朝食べてから、何も食べてない……」

残りの公演予定は夜23:30、22:00終了。
公演後にご飯を食べに出られるのはきっと今日が最初で最後でしょう。

多数決で 「パスタが食べたい」 ということになり、ホテルフロントでお勧めの店を聞く私(梦月)
7人でパスタならあそこしかないわ! とコンシェルジュのおねーさんが教えてくれたのは
少し距離があるけど、有名だというイタリアン。
ぶらーぶら、と歩きながら、夜のアッパータウンを楽しむ私たち。

 ホテルの近所の教会。

そして待っていたのは、ウソかと思うくらいに賑わっている店内。
少しレトロなカウンターバーのある1階を横目に2階へ行くと、
まるでそこはムーランルージュか、と思わせんばかりの大盛況ぶり。

テーブルをすりぬけるウェイター(容姿面接があるに違いないくらいイケメン揃い)が持つトレーには
一瞬、何の冗談かと思うくらいの大皿が。どどーん、と効果音つきで。

 ……ハンパねぇ!!!!

「アメリカンサイズの」カプリチョーザ、とでも申しましょうか。

おにーさん。だって、最初に説明してくれたとき 
「1皿で5人くらいで分けてちょうどいいよ」って言ったじゃない。
サラダがお勧めだって言ってくれたじゃない。
7人だったら2皿で丁度いいかなって言ってくれたじゃない。

出てきたサラダとパスタ2種類に、思わず言葉を失くす私たち。

 ちなみに水のグラスはマクドのLサイズくらいです。

「……これ、『マ・マー』のパスタ、何袋分かなぁ……」
と、途方に暮れるくらいの大きさなのでした……。

 「取りあえず、撮っとくか。」(姐さん呆然/右)

ちなみにココのお兄さん(ウェイター)たちはどいつもこいつもお持ち帰りしたくなるくらいの
イケメン揃い、お世話好き揃い、で、料理もにーちゃんとの会話も楽しめます。えへ。


まるっきり私たちの冷蔵庫となったホテルすぐそばのデリスーパーで朝食や水分を買い込み、
ホテルに戻ってからは綿密なミーティング。
何が起こっても対処できるよう、全員で意思統一を行いました。

いいものを、届けたい。

どこかのデパートみたいなコピーですが、嘘偽りなく、
その一点のためのみ誠意を払い、私たちの深夜はふけていくのでした。