カイン 葵かずき(以下 葵)
ドクター 徳永真理子(以下 徳)
愛情のカタチは違うけど。
葵 : 兄弟対決?芝居の中では淡々とやり続けて……常にハーグリーヴス家に窓から入ってくるドクター(笑)
負け台詞を言いつつ、去るドクター!……どうよ。
徳 : いやあ、お茶目ですね
葵 : お茶目じゃなくて!ね、お兄ちゃん
徳 : お兄ちゃんって呼ぶな
葵 : だって、直接来るときって、負けてるときでしょ。何かやってて、今回も失敗したか、カインに負けたか……と。
でも何か一言言わずにはいられなくて「美しい私のカイン、再会を楽しみに」とか言いながらね負け台詞なんだって、判ってるんでしょ?
徳 : 兄弟の一番上って、したには負けられないんですよ
葵 : そういうもんなんですか!?
徳 : そういう眼で見ると判る気がするんですよ。私も妹がいるんですけど、幼い頃って、母親の愛情は総て妹に行くじゃないですか。
そういうのが許せない。
葵 : ああ〜(納得)
徳 : どうして今までは私を可愛がっていたのに、妹が生まれたらそっちばっかりで。
「私は?」って聞いたら「あんたはおねえちゃんなんだから」って言われて。
でも妹が何か失敗したら、姉の私のせいになるわけですよ。
そうするとね、「アンタ何もわかってないくせに」っていう気持ちがわかるわけですよ。
だから、下の兄弟が嫌い、っていうところはあるんじゃないかなって。
葵 : なるほどね……私そういう感覚わからないんですけど。
でもね、お父ちゃんに愛されてるって言っても、歪んだ愛情でしょ?
カインは鞭打たれたかったわけじゃないと思うんですけど……
徳 : 愛情のカタチは違うと思うんですけど、それでも妹からすると「お姉ちゃんはズルイ」ってなるわけですよ。
葵 : 鞭打たれたかったんですか?
徳 : (笑)求める形は違うんですけどねぇ。
ドクターが見ているアレクシスは、いいお父さんだったんですか?
徳 : そういう風に刷り込まれてるんですよね
葵 : すごい役者ですよね
徳 : ケン・ワタナベだから(笑)
葵 : 今回、役者としてアレクシスが作品には出ないので、イメージを共通するために、私たちの中で満場一致で役者さんを決めまして。
徳 : ケン・ワタナベに(笑)
葵 : アレクシスは世界の渡辺謙ってことに(笑) 彼がアレクシスなら、私デライラに入ります。
徳 : そりゃ抜けられません。
葵 : あんなお父さんに指令されたら「もっと命令して!」ってなりますよね。
徳 : 「今回もちょっと失敗しちゃおうかな」とかね
葵 : おい〜〜〜!
徳 : そしたら鞭打ってもらえる!
葵 : ええ〜!それはいけません、ドクター。
徳 : だからね、かまって欲しいから、わざと気を引くようなことをするっていうのは、子供の心理だけど、
親の愛情が欲しいから、っていうのは判る。
葵 : わざと失敗していた、と。
徳 : 単行本の中でもリフェールが「わざと失態を繰り返している」っていうセリフがあるけど、うん、あれはそうだと思う。
葵 : 知ってやってるんだ……奥深いなぁ
徳 : だからね、わざとカインに解毒剤をあげたり、とかその後怒られるのも判っているのにね
葵 : うわあ、マゾ……
徳 : 失敗したら鞭打たれるのもわかってるけど、カインを他の人にいじめさせたくないんですよ。
葵 : 自分がいじめたいんだ!
徳 : そう!他の人やつにいじめさせたくないんです。オレのもんなんだ、って。
すごい独占欲とか所有欲とかね。兄弟や親の愛情を独占するためってのは判るので、
だからカインが嫌いなのも判るし、生かしておきたいのも判る。
葵 : へええええ。
徳 : そういうのをどんどん歪めていったのがああいう形になったのであって、ほんとうはさびしんぼさん。
葵 : さびしんぼさん!
徳 : 欲しくて欲しくて、でも言えないんですよね。お母さんに好きって言って、とかお父さんに抱き締めて、とか。
そんなのは兄弟の一番上の者としては絶対に言えないんですよ。
葵 : カインは鞭打たれたいわけではないんですけど、家族の中でも無視されてるし……隣の芝生は青いんですよね。
ドクターが羨ましいと思ったことないけど、お前にはわからないだろ、と。
どれだけ虐待されて、家族から離されて、使用人からは無視されて……ないものねだりをしているんでしょうね。
徳 : 可哀想とは思いませんね。いい気味、って。
その真実を知らないけど、知っても同情はしませんね。
そういう形にしてもお父さんの愛情をもらっているって、判れば羨ましい。
葵 : でも、カインにとっては幸せなことではなかったし……抗えない、ってのは一種の刷り込みですよね。
ドクターの目から見たら羨ましいかもしれないけど、カインが望んだことではないしね。
でも彼が支配者になったら平和じゃないかもしれないけどすごい安定しそう。
徳 : 統一されてね(笑)
葵 : 先読みがすごいじゃないですか。
徳 : 執念深いですよね。ものすごい長い年月をかけて色んな事をやって。
葵 : そんな何年もかけて計画的な犯行を企てて。
徳 : 10ヵ年計画って感じですよね。
葵 : 愛ゆえに、なんでしょうけどね。オーガスタを愛していて、彼女を殺したのはカインで、お前のせいだ、って。
元を作ったのはおとーちゃんなのにねぇ。
徳 : 実験、とは言ってますけどね。
葵 : でも愛なんでしょうねぇ。本当に愛していたとは思うんですけど。
何が悪かったんでしょうね。お父ちゃん?ハーグリーヴスの血?
徳 : 思い込みでしょう。
一番●●なのは……?
葵 : お兄ちゃん、変態ですよね。
徳 : ……え?
葵 : 稽古場では、変態はオスカーとカインですけどね。
徳 : 本人、変態って思ってませんから。
葵 : 一番変態を教え込んでいるのはオスカーとカインですからね。
いかにドクターを変態に見せるか、ということに燃えてますから。
自分の役では出来ないから(笑)
カインも……ある意味、変態とは言わないけど、ハーグリーヴスは特異な家ですよね。
血の誓いとか。指に口付けしてるところにドクター出てきても、ドクター全然動揺しないし。
ワガママなんだ、ってカインがリフに縋っていても、マリー普通に飛び込んできて普通に会話してるし。
徳 : でもそれが日常なんですよね。他のところと比較してないから、わからないけど(笑)
葵 : 初めて脚本読んだ時に、この家どういう家だって思いましたよ。
徳 : 上流階級ってわかりませんよね
葵 : ……あれ上流階級のせいなんですか
自信作です。
葵 : ドクターとミケイラの関係も不思議ですよね
徳 : 私の作品ですから。もう、むっちゃいい出来ですよ!
なのに「出来悪い」とか言われたらもう……なんか……噛み殺されちゃえ、って思います(笑)
「シュゼットを冒涜した」とか言われても「はあ?」って感じですよね。「すごくいい出来なのに!」って思うのに。
葵 : でも完全体じゃないじゃないじゃないですか
徳 : ええ!? でも成長するんですよッ?
葵 : 痣も広がってるし……包帯してるし……
徳 : でもね! こんなに急激に美しく成長するなんてね、普通の人間じゃありえないじゃないですか。
最新技術を使ったデッドリードール(屍人形)なんですよ!? いい出来だと思いませんか!?
葵 : えええ!? でもね、完全じゃないし、すぐ疲れるし、日の光に焼かれるし……
徳 : それぐらいが何なんですか! ちゃんとカインのこと考えて、好き〜! って言ってるでしょ。
葵 : こんな中途半端な屍人形与えるの辞めてくださいよ。
徳 : 中途半端って言ったなぁ!?(怒)
葵 : どうせくれるなら完全体をください。
徳 : 完全体ならいいんですか? 完全体なら抱けるんですね?
葵 : そんな話してません! マリーウェザーのケンカ相手にいいかな、と。
徳 : アレぐらいのレベルだから、マリーの喧嘩相手になるんじゃないんですか
葵 : まあね……ミケイラ可哀想だから、完全体になったらハーグリーヴスで引き取ってもいいですよ。
徳 : ほう……じゃあ、認めさせた、ってことでドクターの勝ちでいいですよね。
葵 : えええ?! あの……完全体のためにもう少し研究してください。
徳 : わかりました……また会いましょう。
葵 : 今日はこの辺で(笑)
徳 : この辺で勘弁しといたるわ!