稽古場日記 2


演出家


今回演出の梦月さんはすごい。

もともと博学で頭がいい人だけれど、この作品のためにイギリス史、文化、宗教、ビクトリア調等、

ありとあらゆる資料を読破しそれをベースに「カイン」世界を演出している。

ダメ出しで「それはちがいます!」といわれても誰も文句が言えません。

稽古場は本当に厳しいです。演出の要求は高く、絶対に「よかった」とは言ってもらえません。

 ← 鬼演出のダメ出しを聞く緊張の一瞬です。

でも、ちゃんと根拠がありビジュアルを持っての演出なので、必死についていってます。

英語が堪能な彼女の頭の中にはきっと日本語しか知らない私たちには感じられない文字があふれているのでしょう。

稽古場の雰囲気は緊張感に包まれ、皆休憩中も稽古しています。

梦月さんは演出をしながら自分のセリフも誰よりも早く覚えているし、本当にすごいです。

そして「この作品を最高の作品にするぞ」という意気込みを熱く熱く感じます。

期待に応えるべくキャストも必死に頑張っています。ついていきます、演出!!

 追伸)こんなに誉めたんですから何かおごってください(笑)


オスカーって


オスカー役のえいさくさん(桜華)にかずきさん(葵)が聞いていた。


「オスカーって昔の婚約者に似てるカインが好きなんですよね?」
「好きですよ」
「・・・って事は一番まともかもって思ってたオスカーもやはりまともじゃない?」
「だってカインのこと好きですから」


・・・ふ、深いなぁ。

 「お兄様〜!」と抱きつくオスカー。もしかして下心!?

原作でも爽やかでオトコマエに書かれているオスカーですが舞台版ではもっといい男に書かれています。

(脳みそ筋肉説?はそのままですが・笑)

マリーウェザーを必死に守り、カインと友情(愛情説あり・笑)を育み、窮地を助けます。

稽古場でもドクターの変態シーン(?)にあれこれ指導を入れ、変態同盟の名誉会長らしいです。

そしていつもかずきさんと会話の中に

「私、次のハーグリーヴス伯爵ですから」

と自己主張をしています。こんなオスカー・・・好き・・・ん?

 追伸)こんなに誉めたんですから何かおごってください(笑)


マリーウェザーって


マリー役で悩むけーちゃん(百瀬)に演出からダメ出し。

「そんな覚悟でマリーウェザーやるつもりですか?ファンの方に失礼です。やり直してください。」

青い顔で悩むけーちゃん・・・彼女は普段何もしなくてもマリー的気質で

皆を幸せな気分に出来る人だしそのままでやればいいんだ!と誰もが思っています。

ほんとうにこの人がマリーになったときマリーウェザーの優しさや純真さや元気さ、強さ・・・

全てが備わっていると皆が感じました。

(12才のマリー・・・っていうのはちょっとむずかしいけどね・笑)

だからきっと大丈夫!本番の舞台では素敵なマリーウェザーになっていることでしょう。

この舞台はキャスト達に誰にとっても新しくステップアップするための力を与えてくれます。

頑張れ皆!がんばれマリー!!

 追伸)こんなに励ましたんですから何かおごってください・・・


ドクターって


ドクター役のとっくんさん(徳永)はいつも男役も女役も全く違和感なく演じることの出来る不思議な人です。

彼女の演じる人物は常に性別の前にちゃんと人間なので違和感がないのだと思います。

しかし今回はドクターという想像を絶する境遇の中で生きてきた役柄に加え、

濃厚に皆にからむシーンが多いため、今まで見たことのないほどの集中ぶりで稽古場にのぞんでおられます。

今回の「カイン」は大きく分けると3つに区切られていて

「神の子羊達」「ミセリコルデ」「ゴッドチャイルド」と脚本には書かれています。

「ミセリコルデ」のシーンでカインとドクターが過去について語る心理的要素の強いシーンがあるのですが

このシーンのカインとドクターの対話は鳥肌モノです。

時にはドクターがアレクシスにカインがジザベルに・・・2人とも狂気です・・・他の人も狂気です。(でも好きです・笑)

ドクターと言う難役にとりくむとっくんさんがどんどんドクターに見えてくる今日この頃です。

 追伸)こんなに誉めたんですから、今度美味しいもの食べさせてください。


リフって


リフ役のヴィッちゃん(大浦)は背が高くて薄くて・・・いや、細くて(笑)、

本当に少女漫画から抜け出してきたようなかっこいい人です。

稽古場で普通に稽古着を着ていてもカッコいいです。

その上に感がよくて演技力もあるし、いろんなこと教えてくれるし、几帳面で頼れる方です。

本当にリフがピッタリ似合っています。

たまに稽古場で 「カイン様、私は天国にはまいりません。」 って印象的なセリフを

「地獄へはまいりません」 とか、カイン様に従わないOH!NO!!なミスセリフはありますが(カイン激怒!!)

 「やっと見つけましたよ」

原作のリフが抜け出してきたみたいです。

稽古場での取り組みも本当に熱心で紅茶の入れ方なんかも研究しているようです。

・・・先日、カイン様にお茶を入れて差し上げたようですが

テーブルが紅茶だらけになった事は内緒にしておきます。

きっと雰囲気つくりの本当にうまい彼女のことですから本番は優雅に紅茶を入れるリフが観られると思いますよ。楽しみです。

 追伸)こんなに誉めたんですから、何か買ってください。


カインって


・・・こんなに書いたのですが・・・実はこれを書いている私は葵かずきです。

恐れ多くも「カイン様」をやらせていただきます。

そして気付きました。私皆にモノをせがんでいます・・・こんなヤツ、カインじゃない!!!!!!って

きっと皆様から怒られます。演出からもきっと 「その発想がカインじゃないいんです」 と怒られるでしょう。

ご・・・ごめんなさい。(はい!カインはそんなところで謝らない!!)

先日、リフに抱きつく感動のラストシーンで 「その肩の筋肉いりません」 と言われ悩む私です。

(体細いんですけどねぇ・・・笑・・・っていいのか?)

私とカインの接点・・・まだ漠然としていますが、カインに翼を生やしてくれたのはリフであり、

多くの周囲の人たち(もちろん、ドクターやアレクシスも含めて)は彼を成長させ強くしてくれた。

カインはありとあらゆる環境の中で最後に自分を見つけ壁を倒し「永遠」を見つけた・・・。

私自身も1人の人間としてまた舞台人として多くの友人や仲間に囲まれ、泣き・・・笑い・・・

最高の瞬間を生きていると今感じているし、カインとともに成長していきたい。

はじめは「カイン」って誰?と思っていましたがいまはもう自分の中にはカインがいます。

だから、彼特有のあの微笑を浮かべながらこう言います。


 「俺に会いに来る?」


皆さんと会えるのを楽しみにしています。

     
             righted  葵かずき