新選組については、去年大河ドラマで1年間放送されただけあって知名度が飛躍的にあがり、
山南敬助という名前ですら、知る人の数が増えたと思います。

1昨年12月に演じたときは、自分のイメージだけで膨らませることのできた人物像が
今回は、まさに大河という大きな障害に阻まれたような気がしました。

やればやるほど、大河の中の世界に近づいているような恐怖感。
自分の表現したいものから遠ざかっていくような焦燥感。

今まで出来なかったことが出来るようになって嬉しいのはあたりまえだけど、
今までやれていたことができなくなっているのが一番嫌なコトだと
知人が言っていたのを思い出しては、さらなる不安に駆り立てられた日々でした。

そこからようやく抜け出せたと感じた頃には、もう本番はすぐそこに迫って
いたと思います。

抜け出せたのは、共演者それぞれが作り上げてきた、それぞれの人物像に
引っ張られての事でした。
限りないパワーを与えてもらって、私はようやく自分のやりたかったものに
近づいていくことができたのだと思います。

大河にのみこまれそうになっても、引き上げてくれる人がいるのだという
心地良さを実感し、いつにも増して芝居のアンサンブルの重要性を感じました。

次は頑張って誰かを引き上げる方に回りたいなと思います。


山南 敬助

 徳永 真理子

昨年末に、演出・中野氏からラブコールをいただき、今回この作品に土方歳三として出演させていただきました。

私にとって初めて演じた実在の人物、それが土方歳三でした。
彼は新選組のために自分自身の感情を殺し、捧げる事が出来る強くて熱い人物であったと思います。
多くの隊士を束ねるカリスマを持つ彼の存在を思うと、その重責に押しつぶされそうでした。

けれど、土方がここまで鬼に徹することが出来たのは、山南の存在があったからだと思うし、
そんな土方を支えたのは間違いなく沖田の存在、そしてそれらから目をそむけずに生きる決意をさせてくれたのが
明里の存在だったのでしょう。だからこそ今回の「さくらのごとく」は「真説」なのだと感じます。

舞台の上で4人の思い・パワーがぶつかり、1つに集まるのを感じながら土方が出来た事を、とても幸せに思っています。芝居は一人で作るものではない、そして人も一人で生きるものではないと言う事を実感させてもらいました。

「出会い」を心からありがとう。



土方 歳三

 大浦 薫

稽古期間が短く、新作に近い作品になっていて精神的にキツイかと思いましたが
尊敬する山南さんと元気で優しい明里さんに加え、今回は大好きな土方さんが一緒だったので
とても有意義で幸せな経験をさせて頂きました。

沖田総司として舞台に立たせてもらった事に深く感謝しています。
彼がラストに命の尊さを感じ生きる決意を新たにしたように私自身も初心に帰りパワフルにがんばるつもりです。
またいつか沖田役をやらせて頂きたいです。

舞台は終わったけれどいつまでも自然体で明るい総司でいようと思います。

ありがとうございました。


沖田 総司

 葵 かずき
3度目の明里。3度目の真実。
土方さんを登場人物に迎えての「さくらのごとく」は、今までとは全く違うものになり
正直、戸惑いもありました。1ヶ月しかない稽古期間。
ただでさえ難しい時代物なのに、大丈夫なのかしらん、と思いました。

けれど、舞台を前にした時、3人の新選組隊士たちはプライベートな会話まで、
なんだかその役回りそのままのような自然な空気に出来上がり、
その自然な会話を微笑ましく見守る自分がいました。

なんだ、全然大丈夫。
こんなに安心して舞台へ一歩を踏み出した作品は、今までにありませんでした。

何度重ねても、山南を失った明里はとても悲しくて切ないのですが、
今回初めての経験をしました。
それはラスト。山南を失いつつも、その命の重さと彼の想いを抱いて生きていこうと
明里が決意する、本当の最後のシーン。

「さくらのごとく、生きてみたいね」と山南の声がどこからともなく風と共に聞こえたとき、
とても自然に、私は微笑んでいました。悲しくて切なくて泣いているのに、
何かを納得して、明里は心から微笑んでその声を聞いていたのです。

あの温かく力強い気持ちを、何と言うのか私には判りません。
けれど、皆様の心に、私の心に、共演者たちの心に、あの、芯のある心を伝えることが
できたのなら、これ以上の役者冥利に尽きることはありません。

全ての出会いと、暖かな声に、ありがとうございました。


明里(坂口 里乃)

 梦月 楓