弘法市みてある記 後編 2004.01.21

真ん中らしきエリアを求めつつ、着物屋さんエリアにもう一度寄り、帯を探す。

やっぱり、そう都合の良い帯はない。もともと弘法市は女物がメインで男物が少ないのだ。

ふと見ると、葵さんが何軒か先の店先にいるではないか。ラッキー、会えた。

近寄っていったが、私に全く気がつかない。しかも、さっきからなんか全然動かない。……?

「あの……、葵さん?」と声をかけると「うおおっ」とびっくりされた。

葵さんが手に持っていたのはぼろぼろ系のジーパン。

「ああ、あの、これね、このジーパンがね、私を呼んでてね」何をうろたえているのか。

「はぁ……、そうですか」

「しまった見られたぁ…。私がジーパンに見とれてボーッとしてるところ」いつもでしょ。

「買うんですか?」

「うん、買う。だって500円だもん」そういってばたばたと支払いに行った。

それにしてもほんとこの広い境内でよく会えたもんだ。

私と葵さんの真ん中の基準が一致したらしい。

葵さんは時々弘法市に来ているらしく、どのあたりに行けばどんな店があるかを把握している。

葵さんオススメの、着物全て500円!という豪気な値段の店に連れていってもらう。

着物が山積みになっている。着物が宙を舞っている。当然、黒山の人だかりだ。

実は、私たちは明里役の梦月さんから「私に似合う着物を1着、買ってきてください」と

買い物を頼まれていた。

二人でいろいろ手にとってみるも「どーゆーのがいいんでしょうかねえ」「さあ……」。

これ以上ないくらい頼りにならない。梦月さんは、買い物を頼む相手を間違えたらしい。

「これはどうでしょう」「どうかなあ……」ちっとも決まらない。

ついに葵さんは、渋いピンク色に細かい花柄模様のついた着物を1枚、手に取ると

「これでいいや、買ってくる」と行ってしまった。

いいのかあ、そんな決め方して…と思ったが、確かによくわからなかったし。許せ梦月…。

その後、ざっくりと一周して見て回り、もう帰ろうかという時に、

太さも色も生地も希望どおりの男帯を発見。しかし、値札がついていない。

………ということは高いんだろうか…。

恐る恐る値段を聞くと、あっさり「1000円」と返ってきた。「買う!」即決。

こうして、桜異聞での山南の衣裳は、めでたくバージョンアップとなった。

まさかイメージどおりの帯が見つかるとは思わなかったので、ホンマにこれでええのん?と

一瞬、不安になったほどだ。

さーて買い物も済んだし、どこかでご飯でも食べましょうかと、正門を出て駅へ向かう途中で

「里愛(ria)が弘法市に来てるみたいですよ」と仕事中の梦月さんから葵さんにメールが届いた。

「ええ!どこにー??」。葵さんが里愛に携帯で連絡し確認を取る。

里愛は、練習用の着物と袴を探しに来ていたらしいのだが、まだ何も買っていないというので、

戻って里愛と一緒に品定めをすることにした。

ちなみに里愛は、このかわいらしい名前とは全く正反対の性格であることを大暴露しておく。

東寺の別門から境内に戻り「周りに何が見える?」と携帯でナビをし、里愛と合流。

すると里愛が「つぐみさんも、もうすぐ来るらしいですよ」と教えてくれた。

なんじゃ、それ。梦月さん以外、キャスト全員集合か。

ともかく、里愛をさっきの500円の店に連れて行き、バーゲンよろしく3人で人ごみに飛び込み、

着物を争奪、購入した。弘法市はかなりのパワーが必要だ。

葵さんも里愛も夕方から用があるというので、つぐみには悪いけど時間ないし、もう帰ろうと

門に向かって歩いていたら、前からタイヤキをかじりながら当人が歩いてくるではないか。

「おはようございますぅー(^∀^)」とタイヤキに満足げな様子のつぐみ。

「あの、悪いけど、時間ないから帰るね」と人ごみの中でちょっと会話しただけで別れてきた。

それにしても……。

こんなことなら最初っから全員で来たら良かったんでないの?と思ってしまった。

みんなの息が合ってるんだか合ってないんだか……(--;)。

まあ、お目当ての品が格安で手に入って良かったけれど。

衣裳を替えて、気持ちも新たに稽古をしよう。

……あのくたびれすぎた人形は、誰かに買ってもらえただろうか…。

絶対ムリやろなあ…(-_-)。