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「和彦、世界の終わりはすぐにやってくるかもしれない。……だから私は行くよ。 ……私と一緒に行かないか」 「なぜ?」 |
「君が僕の事を忘れないでいてくれるなら、 君の心の中に今の僕が行き続ける事が出来るなら僕は、 この体がなくなってしまおうとも構わない。 だから僕は飛ぶ、君に向って。」 |
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「今日から3人だけの夏休みが始まるってわけだ」 「友達も先生も夏の間は誰も帰ってこない」 「寂しいんだろ?」 「直人!」 |
「悠……」 「なんのこと?きみたちこの学院の生徒だろ? 今日から世話になるよ。」 |
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「……だから……この電話の向こうに本当は母さんがいなくても 僕は平気さ。どうせ世界はうそっぱちだから。」 |
「母親の愛を独占するには、早く大人になる必要があると…… その瞬間こそが少年の証である事を、その時私は知らなかった。」 |
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「僕にはこの感情がなんなのかわからない。ただ和彦の傍にいたかった。 そのために僕は卒業を拒み、もう一度3年生になることを選んだんだ……。」 |
「そんな時僕は一瞬、子供だけが感じる事の出来る私のなんとも言いようのない 我を忘れてうっとりするような状態に襲われる。 少年の頃、キアゲハに忍び寄ったときのあの気持ちだ。」 (ヘルマン=ヘッセ『蝶』より 朗読) |
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「だから君は悠を憎んでいるんだね。 もう死んでしまったんだから、許しておやりよ。」 |
「待っていれば誰かが愛してくれるのか? 子供なら可愛がられるのは当然の権利? じゃあ僕は生まれたときから子供じゃない!」 |
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「僕は君と出会ったこの夏休みに感謝してるよ。 ……薫? 眠ったのか?」 |
「僕は子供のままでいたかった! 僕だけを見てよ、母さん!」 |
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「愛しすぎないで下さい……。 子供は誰かの、あるいは何かの代わりに籠に飼われている 鳥じゃないんです……。」 |
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「則夫がいなくなった…… 僕は取り返しのつかないことをしてしまったのかも」 |
「みんなはどんどん行ってしまう……僕の知らないところへ。 今の僕は時間の中に置いてけぼりだ。」 |
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「……聞こえる」 「鼓動――」 「……おねがいだから、僕を置いていかないで!」 |
「則夫は仲間はずれなんかじゃないよ」 「……和彦、なんだか優しくなったね。」 |
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「その程度の愛情なんだ……。 母さんはよく、僕にキスしてくれたよ。 ねえ、和彦。本当に僕を好きなら、僕にキスしてよ。」 |
「さあ、行こうよ。森の向こうの湖が僕らの生まれ変わる場所。 湖はきっと優しく僕らを迎えてくれるよ。」 |
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「悠はいつだって君の傍にいるよ。薫はいつだって僕らの傍にいる。」 「うん、そうだね……僕はいつかまた、彼に会える気がする。」 「僕は今度、薫に会ったら、話したいことがいっぱいある。」 |
「君は悠? それとも薫?」 「僕は僕だよ。他の誰でもない、今の僕さ。」 |
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「僕は忘れない、この夏休みを。」 「……そして、僕たちは飛翔する。」 「高みに向って……」 |
「私がまだ何も知らなかったあの年の夏休み。 世界がそれまでとは全く違って見えるようになった。 ……いや、実は私自身が卵の殻を破って変貌したのであろう。 今でもはっきりと思い出すことが出来る、あの夏休み……。 まるでまだ、昨日のことのような気がしてならない。」 |
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1999〜そして少年は飛翔する〜
2003年9月13日(土)
2003年9月14日(日)
於 Art theater dB