2003.10.28


負けた。とうとう届かなかった「夢」。三度、挑みながらついに立てなかった頂点。

最後の7日間が終わった。今日の稽古場は暗い。電気が切れているからではない。

星野仙一率いる阪神タイガースが昨日、善戦及ばず日本一になれなかったからだ。

体調不良を理由に今季限りで引退するという彼にとって、これは正しくラストステージだった。

星野監督を慕い、中日から阪神についてきた島野ヘッドコーチは数年前、死の床についていた

監督夫人から「星野を日本一にしてやってください」と遺言されたという。

遺言を受けながらついに果たせなかったことに、島野ヘッドコーチはベンチで号泣した。

全国の虎ファンが号泣するさなか、星野監督は微笑みながら虎番記者に向かってこう言った。

「この2年間で道筋はつけたつもりだ。あとは任せるよ。今夜からはよく眠れる。

やっと自由人だよ、これからは好きなことやって生きていくよ。」

………あと一歩のところで頂点を逃した。悔しくないわけがない。それなのに……。

これを聞いた虎番記者はメモを取ることも忘れ、涙をこぼしたという。

そして彼の近くにいる人物は、彼をこう評する。

「雲のように風のように。それが星野という男なんだ。」と。

なんと潔く美しく散ってゆくのか。(T_T)

(なんだか死んじゃったような表現だなあ…ごめん仙ちゃん)

まさに「さくらのごとく」ではないか。

彼の魂の熱さ、生き方の潔さ、情の篤さ、心の強さ。たかが2年、されど2年。

誰よりも熱い思いで駆け抜けていったその姿は、まさに140年の昔、時代の波に翻弄されながら

も激しく生き抜いた彼らに重なりはしないか。

自らの命を削りチームを生まれ変わらせた男と、人生を賭して世の中を変えようとした新撰組。

「これからは好きなことやって生きていくよ。」

この言葉は、幾多の困難を乗り越えた後に春を迎え、自らを美しく咲かせ、最後はありのまま受け容れることを知り、

無の境地に至った者にしか口にできない言葉なのかもしれない。

この「さくらのごとく」という芝居で、140年前の事件や想いをどうやって現代人の私が表現

すればよいのかと思っていたが、人の「熱い想い」は時代を超えても変わらず存在する。

むつかしい事なしにそれでいいじゃないか、と思う。

山南敬助という人間像に、そして幕末という時代にほんの一歩近づけたのではないかと思う。

え?稽古の中身?はいはい、やってます、ちゃんとやってますよ稽古。

今日は、各シーンで使う曲を持ってきてもらったので、壊れかけのラジカセで聞いた。

一番最初のシーンで使われる曲はすごい。えーこの曲使うの?うわ、斬新!って感じ。

他のシーンで使われる曲もみなすごくマッチしていて、こうやって芝居はできていくんだなあと

しみじみ実感する役者3人。

劇中で使われるのは10曲ほどだが、この10曲を決める為に2000曲は聴き比べたと担当。

えええー!!2000??しかも「まだラストの曲が決まらないんです」と大変困っていらっしゃる。

「………私も頑張らなきゃ」と気持ちが引き締まる。もう泣いてなんかいられない。

役者3人のシリーズはこれからだ。勝っても負けても絶対悔いの残らないように。

みなさま、応援よろしくー!