2003.12.02 分 稽古場日記 担当 徳永 

ついに目前まで来た。本番はいよいよ今週末。この1週間はきっとあっという間だ。

今日もたくさんのスタッフさんが打ち合わせの為、ぞくぞくと稽古場に集結した。

今日は最後まで残されていた作業、声録り(こえどり)をした。

声録りというのは、字のごとく声を録音することだ。

回想したり、心の内を表現する時に、ナマのセリフではなくて効果的に録音の声を流す。

今回は心理劇ということもあってか、やたらそれが多い。その部分のセリフを録音するのだ。

しかし私は声録りがキライだ。録音した後で、確認の為に聞き直さなければならない。

それが嫌だ。みんな、自分の声って冷静に聞けるもんなの?

音響のスペシャリスト、Kさんが録音準備を手早く進め、整ったところで収録開始。

沖田役の葵さんは、台本の最初から最後までまんべんなく声録りの部分があるので、

一番時間がかかると思われたがミステイクもなく、快調にすすんでいった。

あと少しで葵さんの声録りが終わるという時に、なぜか突然調子を崩し出した。

「近藤さんと土方さん」というフレーズが言いづらいらしく、何度もテイクを繰り返す。

葵さんが、衣裳の袴姿でのたうち回りながら「もういややー!」と叫んでみんなの爆笑を

さそっていた。

明里役の梦月さんは堂々としたもので、なにごともなく無事に録り終え、

いよいよ私のセリフを録ることになった。

録音マイクの前に立つとそれだけで心拍数はアップ、顔色は青くなっていくのがわかる。

「はいどうぞ」というKさんのサインのあと、セリフを読んでいく。

読み終わると、恥ずかしいやら、自分の下手さ加減に自己嫌悪するやらで悶絶寸前だ(*0*;)。

「はい、じゃあ聞いてみましょうか」とKさんが確認で音を出す。

声、裏返ってるし(-0-;)!

演出からも「これはちょっと…」というダメが出たので録り直し。

録り直した声に、みんなが「いいんじゃない」と言ってくれたのでそれでOKってことにする。

けど「ホントにこれでいいのかなあ」と不安になってきたので、いくつかあるセリフの一部を

もう一度録り直してもらう。わりとしつこい性格だ、私。

「さっき録ったやつのほうがいい」と演出。

うん、私もそう思う、と意見が一致したところで収録は終わった。
結局、その後の打ち合わせが長引いて、家に帰ったのは深夜1時半。

もうろうとした状態で私ははたと気づいた。稽古場日記が今日で最終回であることに。

来週の今ごろにはもう全てが終わっているのだ。

思い起こせば……。最初の方の日記で私はこう書いた。

この稽古場ぞくぞくする!何かがいる!と。だが今はもう何も感じない。

それどころかこの稽古場に来ると、のびのびと演技ができるようになった気がする。

「落ち着け、下を見るな、思い切ってやれ」という声が聞こえるような気がするのだ。

「まだまだやなー」と笑いながら見守ってくれているような気もする。

ようするに今でも何かがいることは間違いないようだが、この2ヶ月の間に、

どうやら私はこの稽古場で練習することを許されたようだ。

最終打ち合わせのために、明日4日、もう一度あの稽古場に行く。

それでお別れ。なーんか複雑な心境だー。

本番もきっといろいろあるんだろう。(それはそれで困るけど)

そのいろいろは誰かが[本番編]として後日、面白おかしく書いてくれるに違いない。

本番前のドタバタ&ドキドキ日記はこれにておしまい。

つたない文章を長きにわたってお読みいただき、感謝感謝。m(_ _)m



みなさま、舞台でお待ちしています。

2003.12.03未明  徳永真理子@山南