稽古場日記番外編ぱーとつう

「お琴の寺田屋日記」




○月☆日(水)猛暑なり



今日は、うちの新しい職場となる「寺田屋」に坂本さまに連れて行ってもらいました。

なにぶん初めてやさかい、心細うて…桂さまにもついてってもらったんどす。

おおきに、桂さま。

新しい職場は、京の伏見にある船宿でなんでも薩摩藩のお方が出入りしはるとこで、

気風のええ女将さんが仕切っていやはると聞きました。

あぁ…ドキドキする…。怖い女将さんやったら、どないしよ…。

うちが、かわいいからってイジメられたりしいひんやろか?



うちは、ちいちゃい胸を不安でいっぱいにしながら「寺田屋」へ着いたんやけど、

ちょうど女将さんはお留守やったようで、話に聞いてたお龍さんにも会えしませんどした。

案内してくれはった坂本さまは、この「寺田屋」の常連やそうで

勝手知ったる我が家のようにドンドンお二階へ上がらはるし…。

これから、うちが住み込みで働かしてもらうんはここやと緊張しながらお部屋を回ってたら

何や知らんにわかに頭が痛うなってきましたん。

おかしいな…風邪でもひいたんやろか…それとも、女将さんにうちの心の内が聞こえたんやろかと

思うてたら、桂さまも「ここは、空気が重くて長州の人間には磁場が悪い…

部屋の隅が、やたら暗う見えるような気がするっちゃー」と言い初めはって、

そそくさと外へ出て行ってしまわはる始末。

ほんまに、「逃げの桂さま」やわ…。



やっぱり、男はんは頼りにならんわ。

うちは、とにかく新しい職場で頑張りますわ!

ほんで、お給金貯めてメリケンやエゲレスに行くつもりどす。

これからのうちは、自立した「新しい女子」を目指します!!

と心にかたーく誓った一日どした。





  「坂本龍馬の土佐日記〜おまけ編〜」

 お琴ちゃんも寺田屋で働かせてもらう事になって、ほんによかったのう。

 お琴ちゃん、女将さんの言う事聞いてしっかり働くんじゃゾ!

 ・・・もしかしてお龍にいじめられてもまけんときばりや!




〜その壱〜

 この間、桂さんと総司とお琴チャンを連れて土佐へ里帰りしたのは前に話したかのう?

 台風が近づいている事もしらんとワシらは土佐へ向かったんじゃ。

 道中、四国路を車ではしっちょると一瞬台風の雲が切れて満天の星空が見えた(らしい)

 ・・・なぜ(らしい)かというとワシは車を運転しちょったから見えんかったんじゃ。

 皆は 「こんなきれいな星空見たことない!」としきりに感動しちょる!

 「ワシも見たい!!」と途中のパーキングで車を降りて空を見上げた。

 ・・・パーキングは街灯だらけで明るかった。・・・満天の星空・・・見えるわけないじゃろう・・・。

 たまるかっ!くやしいのう・・・。



〜その弐〜

 「坂本龍馬記念館にて・・・」

  朝から怒涛の桂浜の波を見て過ごし、開館を待ってワシの記念館へ行ってきた。

  やっぱり故郷はええのう、ワシをヒーローちゅうよりも一人の人間として

  伝えてくれる素晴らしい記念館じゃった。地下のワシの手紙がこじゃんと置いてある

  部屋でワシは誰かに背中を触られた気がしたんじゃ。親しげないい感じじゃった。

  きっと本家の坂本龍馬さんが舞台で龍馬になるワシに「がんばれ!」言うてくれたんじゃ。

  「コワイ」とかじゃのうてほんにやさしゅう感じたんじゃ。

  坂本さん!ワシゃあ、がんばるぜよ!ほんにこの記念館はええ感じじゃった。



〜その参〜

 土佐のワシの生まれた家の後に建っちょるホテルに泊まった。このホテルはどこを見ても

 ワシの写真と幕末の資料の展示のオンパレードじゃ。ワシと桂は土佐の街が見とうなって

 外へ出た。台風のせいで外は嵐!土砂降りの雨!!・・・横断歩道で信号待ちをしちょる時

 一瞬、太陽が姿を見せて虹が出た!ワシはその虹に感動して気をとられた。ドボッ!!

・・・でっかい水たまりに思いっきりはまった。そこへ再びスコールのような雨が・・・。

 ワシが何したっちゅうんじゃ?!



〜その四〜

 夜、食事に土佐名物「かつおのタタキ」が出た。こりゃ、たまるか!ワシは土佐っこじゃきに

 タタキは好きじゃが・・・舟盛りいっぱいに盛られた「かつおのタタキ」と刺身は4人で食う

 には多すぎる。・・・しばらく「かつおのタタキ」は見とうないがぜよ。

 ほいじゃけどその夜は桂と総司とお琴と一緒にこじゃんと飲んで騒いだんじゃ。

 土佐はええところじゃ。また、かえるきに!



〜その五〜

 おまけのおまけ「壬生寺〜八木邸にて」

 新選組ゆかりの地、京の壬生寺へ行ってきたがじゃ。そこで、就職活動中の東京都民と

 幕末大好き人間の埼玉県民に会うて、この国の将来とワシらのユメについて語り合うたぜよ。

 東京都民はワシの海援隊に入れちゃりたいが、保険がきかんきのう・・・。

 皆、いろいろ考えて生きちょるんじゃ。「新選組」も「幕末」ちゅう時代も青春しちゅう

 ワシらにはたまらん魅力ぜよ。こんまい事気にせんと皆、がんばろうぜよ!!

 ワシらにはまだまだ、やれる事がまっちょるんじゃ!



〜その六〜

 「稽古場で」

 ワシは千葉道場で剣術の稽古をしちょったが最近は刀をぬいちょらん。

 この舞台の稽古場でワシが参加する殺陣のシーンは1つしかないんじゃが

 この間、殺陣指南の先生が刀を抜かんワシを思いやって扇での殺陣を考えて

 くれちょった。・・・途中で扇を飛ばす・・・「暴れん坊将軍」みたいにカッコええ

 ・・・はずじゃがワシはコントロールが悪いらしい。扇がうまく飛ばん・・・(~~;)

 道場の皆はまっことうまいやつばっかりじゃ。ワシが飛ばすといろんな場所へ

 扇が飛んで行きゆうから皆、扇の直撃を避けて逃げ惑うちょる。

 すまんのう、みんな・・・。



・・・ちゅうことで、土佐に里帰りもした、壬生寺と寺田屋にも行った。

100年ちょっと前に確かに生きちょったワシとワシの仲間の熱い思いを

この舞台でしっかり伝えるきに楽しみにしとおせ!