悠が湖に身を投じた時、 少年達の心に大きな波紋が広がった・・・ |
則夫は言う。「・・・僕は悠が死んだなんて信じられないよ!!」 悠が消えて3ヶ月、学院の寮に残った3人の少年達。「直人」「和彦」「則夫」はそれぞれの想いを胸に夏休みをむかえる。 |
「転入生なんだ、よろしく」 差し出された手に和彦は当惑する。 湖に消えた悠とそっくりの少年がやって来た日、少年達の夏は変わりはじめる。まさにそれは蝶の幼虫がサナギに変化する瞬間だった。 |
鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ・・・。 生まれようと欲するものはひとつの世界を破壊しなければならない。 |
「・・・ヘッセの『デミアン』だね・・・」 |
悠にそっくりな少年「薫」に戸惑う3人の少年達・・・。 突然ヴァイオリンの音色が響きわたる。 則夫は叫ぶ・・・「いつも悠がかけてたのと同じ曲だ。本当に悠が帰ってきたんだ!!」 |
和彦は薫の部屋へむかって走り出す。2人はころげ回って喧嘩をはじめる。少年達は時にひどく唐突だ・・・。 薫「何だよ!僕が何したって言うんだよ!!」 |
僕は悠が嫌いだった。悠を見てると息苦しいような気持ちになった。 | |
「・・・あの時の罪だけでも僕は地獄に落ちられる。」 直人は和彦に何かを言おうとする。 和彦はそれをさえぎる・・・。 「もうそれ以上言わないで」 |
「悠は僕の内側に土足で入りこんで来てそのまま居すわっているんだ」 「裸足で、裸でだよ!」 ・・・悠とそっくりの顔をした少年からの言葉は 和彦の中に重く沈んで行く。 |
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「悠は和彦が好き・・・直人も和彦が好き・・・ 薫がやって来た。・・・これは仲間はずれの僕・・・」 則夫は呟く。・・・言いようのない寂しさをこめて。 |
母親のアトリエに帰った薫を追って和彦がやって来る。 「僕らはいろんな経験をしてそれぞれの場所へ旅立つ・・・。 秘密のトランクに思い出をいっぱいつめこんでね」 |
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僕は誰かを好きになった事なんてなかった・・・ |
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「時がやってくるね。僕らはこの瞬間(とき)を忘れないよ」 |
全ての少年達にとって「1999年の夏休み」は永遠に続いて行く・・・。 このカウントダウンは終焉であり・・・全ての始まりでもあるのだ。 |